2010' 6 / 11
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MFB視聴会の模様 2010' 5 / 16@BSN |
見よう見まねでアンプ作りに手を染めた1960年ごろはモノラル時代で真空管アンプは可聴帯域の20Hzから20kHzが満足に増幅できなかった。パワートランジスタ によるOTLが主流になってからは物理特性と音質は目覚しく向上していった。アンプの物理特性は人間の聴覚を超えて改善が進み、ひずみ率が0.001%以下が測れるようになったころには「物理特性を良くしても音には関係ない」と言われるようになった。4半世紀も昔のことだ。
ときたま「物理特性が良いのに音が・・・」のフレーズを聞くことがある。物理特性は水準以上であって欲しいものだ。
4半世紀の時を数えたが、スピーカーだけはほとんど改善されていない。中途半端な周波数特性が示されればマシなほうで相変わらず可聴帯域を満足できないばかりか、どんなに高額なスピーカでも独特で違いすぎる音色を奏でている。こんないい加減なコンポでアンプの良し悪しを云々したりする。ネットワークひとつとっても間違いだらけで、おかしな言い伝えに満ち満ちた世界だ。
スピーカーでも「物理特性が良いのに・・・」のフレーズを聞くことがある。ありえないことだ。
何とか近づけたが・・・
理想形状とされる強固な球形エンクロージャに2.5kgのデッドマスで振動支点を明確にしたMG100HR-Sをフラッシュサーフェスに組み込み、イコライズした速度型MFBでドライブしている。微小レベルのリニアリティーが改善されパッシブドライブでは聞こえにくいソースに含まれるホールトーンやアーティストの息遣いなど微小レベルの再生が可能になっている。
無響室録音など響きを伴わないソースでは聴いている部屋の響きが純粋に付加されるため、あたかもスピーカーのセンターで実際に演奏していると錯覚できるほどの生々しさがあるし、ボーカルはそこで歌ってくれているかのような実在感がある。
スピーカの低域はかつてないほどフラットに近づいたが、まだでこぼこが認められるし、ダイアフラムのストロークが取れない低域ではひずみ率は悪化している。まだまだ不足だ。
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前作で取り付けたガスケットは音に影響が大きいため取り外した。 |
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軸上10cmの周波数特性 |
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ひずみ率特性 |
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SSC
1970年代、日本ビクターによって実用化されたグラフィック・イコライザはスピーカーの周波数特性を改善できる画期的なコンポだった。 オーディオフェア併設イベントで科学技術館ホールでの、グラフィックイコライザで補正した無指向性球形スピーカGB-1型によるオーケストラ生演奏とのすり替え実験は、目の前で曲の途中ですり替えたにもかかわらずわからなかった。今にして思えばホールの響きに思いをめぐらせるべきだったがあの時は生の音そのものだった。
1980年、実測チャート付の測定マイクMU-S80とSEA80を導入し、38cm2発の3Dを加えたマルチチャンネルドライブの4wayコンデンサ・スピーカシステムで視聴位置で20Hzから20kHzをフラットに補正して悦にいったものだ。やがて10ポイントの補正では不足を感じるようになったが当時は望むべくもなかった。
BSNのSSC(Sound Stage Conductor)は、スピーカユニットや設置場所の影響で生じる周波数特性のわずかなアバレを、30年前とは比較にならない程のレベルで改善ができそうなのでシステムを構築してみることにした。IEEE1394インターフェースを備えた静音Windows7マシンを新たに組み上げ、測定用マイクのべリンガーECM8000+Micport ProとペリフェラルのM-AudioのProfire610で構成している。
SSCはスピーカーシステムの測定・補正や視聴位置の測定・補正に加えてFIRフィルタによる4chのチャンネル・デバイダや低域ブースト、フォノイコライザなどの機能を高分解能なフル・デジタル・プロセスで実現している。各チャンネルにはデレイ機能を備えていてスピーカユニットの前後の位置あわせが出来る。測定・補正は周波数特性と群遅延特性、位相特性など欲しいものが全部そろっていてうれしくなってしまう。
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SSCのペリフェラル |
SSCの設定
今回はSSCの1chをスルーで使いスピーカーシステムの測定・補正や視聴位置の測定・補正を行っている。 この1chの応用はどんなスピーカシステムにも使えるので物理特性の改善がもたらす素晴らしい効果が確認できるはずだ。
音がでないと??になっちゃうので陥りやすそうな設定の要点をまとめておく。
・初期設定: Profire610をファクトリ設定にしておく。その後はSAMPLE
RATEを192kHzにして評価した。SSC1.1.2ではBUFFER SIZEは自動的に4096になるようだ。
・IOセッティング:SSCからNew Projectでデフォルトのままとした。SSCの入力をInputの2とし
て実際の信号はProfire610リアパネルのLine Input3(左)と4(右)に入力する。
・CROSS OVERセッティングでBUS1にチェックを入れておく。Profire610リアパネルのLine
Output1(左)と2(右)の出力をメインアンプに導く。
・ソースを再生してBus1のメータが振れればレディーだ。
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Profire610をファクトリ設定にしておく |
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IOセッティングはデフォルトのままだ |
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Bus1のOnにチェックする |
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Profire610に入力しBus1のレベルメータが振れればReadyだ |
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スピーカ測定
マイクの位置を変えずにSSCで分析した周波数特性だ。低域のエラーが累積しないように Truncate IRはかけていない。
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補正前のスピーカー周波数特性 |
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スピーカー補正
補正して低域をあげすぎるとダイアフラムがフレームに衝突してしまうため、低域の補正を欲張らない範囲でSSCによるベストポイントを探ってみた。すごい周波数特性を得ることができる。
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補正したのスピーカー周波数特性 |
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Myspeakerによる同じマイク位置でのアナログ周波数特性だ。中域のふくらみや5kHzあたりのダイアフラム共振、10kHz以上のHRコーン特有の形状によるでこぼこがまで理想といえる特性になっている。もちろん左右でピタッと揃う。
見果てぬ夢「ゲイン・ウィヅ・ザ・ワイアー」を彷彿とさせる。かつてここまでフラットな特性を部屋で実現する方法はなかった。ネバー・シーン・ビフォアだ。(^ ^);/
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SSCで補正した軸上10cmの周波数特性 |
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スピーカー補正の効果
音の評価にノイズは禁物だ。何を聞いてるかわからなくなってしまう。パソコンに残る回転系のノイズは静音ファンとファンコンで対策したが、電源のDC-DCコンバータや内部クロックの電気的なノイズを盛大に発生する。パソコンの電源とIEEE1394(メタリックケーブル)接続のProfire610の電源をまとめて「おやいで」の絶縁トランスで浮かせている。 アンバランス入力のアンプでは除去できない同相ノイズを電源ループを隔離することで音の純度が下がる危険を回避している。
肝心の音はどうだろうか?アナログの物理特性改善で十分かと思えた音は劇的といえるほどに自然で滑らかな密度が高い音に変貌する。改善というには違いすぎる音だ。クラスが違う。純粋にソースの音を彷彿とさせてくれる。 ピュアな響きだ。
・評価用の男性ボーカルは自然ですぐ傍で息づく人の気配を感じることができる。
・無伴奏フルートでは、ランパルと同じ空間にいるかのようで歌口の息遣いが生々しく、ホールの残響がより自然に感じられる。
・ピアノ演奏では、フジ子ヘミングのペダルワークによるフルコンサートの機構音までくっきりと再現する。彼女の動きしぐさまで見えるようだ。
・60'70'の復刻CDでは当時のオーディオ装置では決して聞くことができなかった生々しく現在と比べても遜色ない良い音が入っていることが確認できる。
当時のプロ用録音機材の優秀さ、アーティストやエンジニア達の努力に頭が下がる思いだ。
定義があいまいで評価尺度が無い「原音再生」に手が届いた!ようやく音に2番目に支配的なスピーカをねじ伏せた!そんな気がする。
ルーム測定・補正のポイント
1960年台後半、オーディオメーカはこぞって視聴室を備えたショールームを開いていた。これらの視聴室は例外なく壁から離して厚い緞帳を幾重にも重ねて覆っていて吸音に努めていた。メーカー毎に音の主張があり、製品ごとに異なるこまかな違いまでも克明に聞き分けることができた。終日楽しんでは導入の参考にもした。
今ではどんな演奏にも特有の響きを付加する変な部屋が珍重されていて隔世の感がある。「●●●●●ルームの設計」と活字になっていたりすると、ついついありがたがっちゃう活字文化の末裔の悲しさで抗うことは難しく一時は信じちゃったりもした。固有の響きは邪魔だ。何を聞いても同じになってしまう。ソースに含まれる以外の余計な音はいらない。
1970年代後半、友人宅で音場測定を行いグラフィックイコライザで周波数特性を補正しては効果を楽しんだのだが中に改善されないケースがあった。音が良くならないのだ。 当時一般的だったワーブル ・トーンによる測定やレゾルーション・バンド幅の広いリアルタイム・スペアナ表示では原因の特定が困難で時間がかかった。フラッタエコーと呼ばれる定在波が原因だった。SSCはグライドトーンとスムーズネスで細かなピークディップやメディアン値など自在に読めるので判定と対策がとり易そうだ。
ルーム補正は諸刃の剣でもある。測定に際してはスピーカーとマイクの位置関係は厳密でなければならない。スピーカーユニットの軸上でないと補正の意味がなくなってしまう。細心の注意が必要だ。
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スピーカーとマイクの位置関係 |
ルーム測定
小口径ユニットで20Hまでのレスポンスを欲張ったためストロークが取れず十分な音圧がとれないのでスピーカにぐんと近寄って測定と、補正や視聴評価を行った。スピーカと耳の距離は80cmだ。
スピーカに近づいたのでけっこうまともと期待はあったが実際の特性は部屋各部の反射で周波数特性は左右チャンネルでバラバラになっている。スピーカー単体でどんなに特性を追求しても視聴位置ではこのようになってしまう。
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補正前の視聴位置特性 黒-左ch、 赤-右ch |
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ルーム補正
今までは測ることが出来ても補正が厳密でなく有効性に疑問があり現実的ではなかった。目をつむっていた分野でもある。部屋がもっとも支配的だとはわかっていても手を出しにくかった領域だ。
低域を欲張らず45Hzから、高域は24kHzまでの範囲で補正した実特性だ。広い範囲でエネルギーがフラットになり左右で一致する頻度が高いことがわかる。
ルーム補正を有効にした瞬間、もうこれ以上はないとさえ思えたスピーカ補正の改善をはるかに超える。音の鮮度がちがう。
録音スタジオの音声卓でしか聞けない音に限りなく近い。全ての音が欠落無く聴こえ濃密な音に包み込まれる。エンジニアたちがアルバムに込めた音をスピリットを髣髴とさせる。
最新のハイビット、ハイレゾの自然さの音の違いを克明に聞き分けることができる。耳への最後のパスの改善は確かにいままで営々と改善してきたどのコンポよりはるかに大きかったと分かる。
時を遡り演奏会場にいってその空間を共有しているかのようなそんな感激が味わえる。
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補正した視聴位置特性 黒-左ch、 赤-右ch |
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周波数特性ひとつとっても物理特性の違いは聴感上大きなインパクトがあった。20Hzのレスポンスを改善して、SSCでは補正しきれない部屋固有の問題を改善することでもっともっと良くなる。に違いない。道は続く・・・・