ダイナミック・スピーカのダイアフラムを指の腹で軽くたたくと、「ボ-ン」と低い周波数の音がする。アンプの電源を入れて電磁制動を利かせてもたいした違いはない。 お遊び程度の評価なのだが、パルス入力で固有の出力があるのだから共振系であることがわかる。ダイナミック・スピーカは入力信号とは関係ない固有の音がするおかしな音響パーツなのだ。こんなんを基準に音がどうのと一喜一憂して、ん〜十年、そろそろ気付けよ・・・・

春まだ浅い頃、道すがらの満開の梅畑を眺めながら辿ったあの日の高橋和正宅での経験は忘れ得ない。

高橋邸近くの梅畑

うごかない

「触ってごらん」と促されておそるおそる触らせてもらった机の上の小さな試作MFBスピーカのダイアフラムの感触は全く違っていた。いつとは無しに指先にしみついた期待したリアクションとは別次元の、あたかも硬い板でも触っているかのようで、少しだけ力を籠めても「むにゅー」と押し返されるようなそんな感触だった。そればかりではない。スピーカ・マニュファクチャラが特徴として謳う 軽いダイアフラムの材質そのものを感じることができるかのようだった。

試作のMFBスピーカ、うっ!動かない!

MFB検出機構をセンターに備えた改造三菱ハニカム・ ウーファのダイアフラムもアンプの電源を入れたとたんに振る舞いが一変した。指の腹でやさしくたたくと期待した音とは全く異なる聴いたことがない甲高い質の、軽いハニカム ダイアフラム単体とも異なるしっかりと押さえつけられたような感じの音になるのだ。

ずいぶん昔のことだが、車の支持機構を触るチャンスがあった。ダンパを機能させたとたん人間の力ではびくともしなくなった。制動がちゃんと機能していれば動かないのが正しいのだ。目からうろこの出来事だった。

スピーカ解説にでてくる用語「ダンピング」や「制動」のなんといい加減なことか?信じたばかりに何と無駄な回り道が長く果てしなかったことか・・・・・。

MFBウーファも同様なのだ

MFBスピーカ

見るからに精緻なMFB検出機構を造りこむには、それなりの工具、準備が必要で簡単に手を出せそうにありません。沢山の試作品を見せてもらいもろもろの苦労話や素晴らしい音を耳に刻んで、 さらに、高橋先生の手になる「21世紀のスピーカ」に登場したプレミアもののSEASのMFBスピーカそのものを譲ってもら っちゃいました。 (^ ^);/♪♪♪

MFBスピーカ

MFB検出コイル出力

箱に入れない裸の状態でのこのユニットのMFB検出コイルからの周波数応答データだ。最低共振周波数60Hzをピークに高域で単調減少し 鋭い谷を越えると一転して増加している。原理的に速度型であるはずのダイナミックスピーカは実際の製品はこのように加速度型の特性を示すのだ。

赤の直線は書き添えた参考の加速度(-6dB/oct)ラインで広い範囲で近似している。

500Hzから2kHzを越えるあたりに認めらる乖離はものの本によるとエッジ共振とかダイアフラム共振とかよばれる周波数で、ダイアフラムそのものの振る舞いが電気信号として検出されるのが見て取れる。中域もMFBの恩恵が得られることを示唆しているわけだ。

5kHz近辺に鋭いディップ(谷)がある。これはMFB検出コイルは電磁シールド無しボイスコイルボビン軸上に距離を置いて巻かれているためパルストランスが構成された結果のクロストーク信号だ。

このMFB検出機構の守備範囲は2kHz〜3kHzぐらいまでとして良さそうだ。

MFB検出コイルからのモーション信号周波数応答

何がわかるのか?

これは何なのか?ダイアフラムそのものを共振させて周波数特性フラットをもたらすための巧妙な仕掛けだ。だから ダイナミックスピーカの歪は低域で激増して音が汚いし、最低共振周波数以下は再生しないとなるわけだ。

ダイナミックスピーカはコンベンショナルドライブ、つまりフラットなアンプでドライブしたのでは信号に忠実な応答は決して得られないのだ。どんなに情熱をを注ぎ込んだって 無駄な虚しい行為なのだ。

一説にダイナミック・スピーカの低域は速度型、中域は抵抗型、高域は加速度を示すというのがあるが現象面だけ捉えたもので本質ではないものとわかる。

つづく